@article{oai:bunka.repo.nii.ac.jp:00000707, author = {久保田, 文}, journal = {文化女子大学紀要. 人文・社会科学研究}, month = {Jan}, note = {今日,かつてのノーベル賞作家スタインベックは大半の人々にとって,The Grapes of Wrathによってその名を残す存在である。たしかに,1930年代の大不況下にあったアメリカにおいて,スタインベックは極貧と持たざる者の見果てぬ夢を描くことで社会を揺り動かした。その後の大作East of Edenを経て,1960年代をむかえた彼は,病後の体調を押してアメリカ再発見の旅に出ることを決意する。愛犬チャーリーを伴いキャンピング・カーを駆る旅に出た彼は,季節労働者の家族と一期一会の時を楽しみ彼らの明るい笑顔を喜びながら,自分のような作家たちが理不尽なまでの不平等に苦しむ季節労働者の生活を変えたことを,自負をもって回顧している。しかし,同時にスタインベックは,豊かに見える時代がやって来て,世界が新たなる罠につまずいて重大な問題に直面しつつあることを鋭く予知していた。何不自由なく暮らしながら,敵意と破壊への衝動にかられている若者。物質の氾濫する社会にあって,欲求不満の苛立ちと挫折感に苦しむ人々。他人が殺され取り除かれていくことを,ほとんど黙認する社会… これらに対しスタインベックは,「人の生命が貴重であった頃に作られたモラルは,もはや通用しない。新しい倫理観の確立が必要である」と主張し,人の生き生きとした生命力を奪うものへの嫌悪感を顕わにしている。アメリカ一周旅行の経験と感慨は,Travels with Charleyに収められ,アメリカという国が抱える問題点を更に踏み込んで捉えたエッセイは,最後の作品America and Americansの形をとった。後者の出版の二年後,スタインベックは没した。そのため,彼は我々の取るべき方向性を具体的には述べてくれていないのだが,彼の数々の作品の中から,答えを拾うことは可能である。その前にまず,この二作を中心に分析することから,スタインベックが後に続く我々に聞かせたいと願ってくれた最後の警鐘に,じっくりと耳を傾けたい。}, pages = {1--15}, title = {ジョン・スタインベックによる最後の警鐘}, volume = {14}, year = {2006} }